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三浦瑠麗が細野豪志に切り込む!

2019.04.05

三浦瑠麗が細野豪志に切り込む!

■「意外にですけど、人々は政策を求めてるんじゃなく、そう考えるに至った経緯を知りたいのかもしれませんよ」

なぜ細野豪志は「政治」という道を選び、「児童虐待」をはじめとするダイバーシティの問題に精力的に取り組んでいるのか。そして、今後政治家としてどうあるべきなのか。

国際政治学者・三浦 瑠麗さんに、アドバイスをいただきました。

■「児童虐待」に関心を持つきっかけとなった次女の存在
三浦さん:
細野さんは、なぜ他の議員よりも児童虐待に関心を強くお持ちなんですか?

細野:
もともとは、個人的な事情からです。2012年の年末に次女が、637gの超低体重児で生まれ、9日目に死んでしまったんですよ。それがきっかけで、児童養護施設をまわったり、里親という選択肢を考えたりしていくなかで、逆に政治家として何かができないかなと思って6年くらい前から関わりだしたんですよ。

それこそNICUで育っている子もたくさんいるし、元気に出ていく子いるし、出られない子もいる。親とは何かをすごく感じましたね。そのなかで、児童養護施設に行くと、やはり虐待されていた子が多いんです。もちろん、児童養護の人も頑張ってるけど、やっぱり家庭的な環境を我々は提供すべきではないかと思ったんです。

そこでいろんな家庭の話を聞いていて思ったのは、やっぱり「ダイバーシティ」が鍵となるんですよね。別に血の繋がりだけが唯一の親子環境ではない、いろんな家庭の姿があると思っていて、むしろ歴史的に日本は、そういうものを積極的に受け入れていた時期があるはずなんです。

三浦さん:
なるほど、そのご経験は良く分かります。細野さんのようないわゆるメインストリームの男性って多様性や女性、子どもなどの問題に普通はあまり気づかない。だからそうしたリベラルな社会を目指し始めた背景には個人的な思いが何かあったのだろうと思っていました。そうした社会観は政治家人生に入ってからですか?

細野:
私は小学生のときから同級生に障害を持っている子もいたから、なんとなくそういう友だちといるのが心地よかった、というのはあります。子どものころから、いろんな人がいる社会に親和性を感じていたと思いますね。あとはやはり、娘の存在だったり。

三浦さん:
娘を持つと男性って変わりますもんね。

細野さん:
多様性っていうとピンとこないでしょ。でも、ダイバーシティって結構深い言葉で、インクルージョンよりダイバーシティの方が価値が高い言葉だと思うんですよ。

結局それって我々が国家とか政治を考える時に、なんのためにあるのかってとこだと思うんですよね。仮に国家に対して非常に反逆的な人がいたとしても、そのひとの自由な確立した個を守るために国家はあると思ってるんです。

だから、日本に足りていないのは、「国家を大事にするのは、個人の一つ一つの全然違うモデルを持っている個人を大切にするためである、という発想」だと思います。

国民の人権や自由を守るためには国家って相当しっかりしないとこれからの時代逆に難しくなっていくけど、究極な目的はあくまで国民の安心であり、自由であるということだけは失わずにいたいですね。

■細野豪志が政治を選んだ理由

三浦さん:
でも、そうすると、なんで細野さんは「政治」を選んだんですか? 政治という世界はものすごく無駄が多いじゃないですか。

たとえば企業人だって明確に社会をよくしているわけですよね。企業人がソーシャルなものに関心がないというのは全く間違っている。また、大企業に関しても日本では上に立つ人であればあるほど、社会に対する恩返しや奉仕という認識がある。災害時の救援や復興など儲けがまったく出ない場合にも、国家に対する奉仕を重ねてきているのが彼らですからね。社会貢献と自由を貫くこととのバランスが、彼らはしっかりしている。

逆に言うと政治の側の方が、そういうのができていないんじゃないですか。政治家を取り巻く世界は政治家に奉仕してくれる人に溢れているし、口利きや利害調整のように具体的な要望を自分が叶えてあげているという意識が強い。しかし、企業がしっかり政治から距離を置いて独立独歩でやってきてくれたからこそ、日本にはかろうじて自由の領域がある。そのなかで、これだけ無駄の多い政治の世界になんで細野豪志が入らなくちゃいけなかったんですか?

細野:
はじめはシンプルな理由でした。学生のころ、阪神淡路大震災で2ヶ月ボランティアをしたんですけど、困っている人に手を差し伸べることで状況が良くなるというのはすごいやり甲斐がある一方で、ある種の虚しさを感じていました。仕組みを変えたらもっとできるのに、一人ずつしか対応できない自分の無力さが浮き彫りになったことで、これを仕組みとして変えられるのは政治じゃないかと思ったんです。

でも、いざなってみたら、本当に効率悪いね。「これやってよかったな、変わったな」って思える瞬間って1年のうちに何回かしかない。ただ、それができたときはすごく大きいです。

たとえば2年前であれば生活保護家庭での進学の問題についてやったんだけど、18歳になったら、働くことを奨励されていた子どもが、自分の動きによって進学の道が開かれるようになりました。これにはすごいやり甲斐を感じましたね。その、年に数日ある「やってよかった」ことのインパクトが大きいからやめられない。

■三浦さんが思う、細野豪志の今後の在り方
三浦さん:
政治家の活動っていろんなものがありますけど、どういうときに1番パッションを感じるんですか?

細野:
私はあまり目立つの好きじゃなくて、むしろ隠れたところで仕掛けをして、段取りをして結果を出せるのが嬉しいですね。

「政治の本質は何か」という問いに、田中角栄元総理が「ことをなすことだ」と仰ったそうですが、これってすごく重たい言葉だと思うんです。表に出て迫力のある演説をすることがことをなすことに繋がるなら喜んでやりますが、意味がないなら別にそれをやらなくてもいいと思っています。だから私が今回二階派を選んだっていうのは、決して表舞台に立ちたいということではないですね。それを私は求めていません。

小さなことでもいいからことをなしたい。それで自分としての政治家をやっている意味とか、それをしっかりもう一回見出したいんです。

三浦さん:
それはちょっと意外ですよね。一般社会から細野さんを見ている人からすれば、表に立ちたい人に見えるし、弁舌さわやか系に見えると思うんですよ。でも、ちょっと細野さんを知ると、意外に説明下手というか(笑)。ロジックやパッションはおありなんだけれども、行動原理をあんまりちゃんと語ってこなかったからこそ、誤解が生じる局面もあるのではないかと思うんですよね…

私ね、自民党の政治家のなかで好きな方を挙げると高村正彦さんなんですけど、とても情熱的にご自分のロジックを組み立てるんですよね。あれだけ頭がいいのに喋り散らさず、しっかり考えて悩み抜いて検討してから持論を作る人なので、間違わないんです。私これが保守的な政治家のひとつの理想形だと思っていて。

細野:
なるほど。重要な要素ですね。思いつきで言わない。

三浦さん:
ええ。だから、必ず彼の判断って穏当なんですよ。摩擦の多い韓国との関係でもそうですし、アメリカに対する応答もそうです。私も、スピード感とか意見を異にする場合はもちろんあるけれども、彼が良く考えて達した結論であることは分かるので、納得感があるんです。なんで細野さんがそう思ったのか、っていうのを有権者はもっと知りたいと思うんですよね。意外にですけど、人々は結論としての政策を求めてるんじゃなく、そう考えるに至った経緯を知りたいのかもしれませんよ。

理想論で全部「こうすればいい」なんてことは政治の世界では無理なので、考え抜いたものを「これが今の最善です」と主張されたらいいのではないかと私は思うんです。つまり、細野さんが自らの去就や政策について自分の言葉で語られるときには、その悩みのプロセスを伝えることで人びとの支持が得られるのではないでしょうか。

細野:
なるほど。国民のみなさんに「こういうことをこいつはやってるんだ」と思っていただくためにはそこが、まだまだ自分には足りないのかもしれませんね。

三浦さん:
ヒラリー・クリントンさんが上院議員になった時、ファーストレディーからの落下傘として批判されましたけれど、彼女はひたすらニューヨーク州のために働いたのをみんな見ているんですよね。とりわけ、彼女が力を入れたのが退役軍人の処遇や手当です。地元密着の理念にかなった活動と、ヒラリーの場合は優等生イメージから一歩進んで、さらに自分の思いを表現する言葉を得たことで、2016年の民主党党大会において彼女史上クライマックスの支持を得られたんだと思います。やはりその過程があったからこそ、リーダーとしての総合的な判断能力に信用が出てくるわけで。

細野:
なるほど。今のすごく重要なヒントですね。自分なりの理念なり、思いなりをちゃんと入れないとダメですね。

三浦さん:
自民党のなかには「細野豪志が入ってくることで俺たちになんの得があるの?」という意見がありましたよね。私はストレートにこう思いましたよ。「多様性の問題だって、女性の働きやすさや、児童虐待の問題だって、自民党がもっと取り組まなければならなかったけれども不得手とする分野。そこに、せっかくそれをやりたいって言ってる人が出てきたんだからやってもらえばいいじゃない」と。何人かにそう言いましたけど、納得感はあったみたいですね。自民党の多様性を広げることになりますから。

あと、細野さんは政治という古い世界にいるから、実年齢よりも年上の立場や考え方を体現してこないといけなかったと思うんですよ。本来自分が思ってもいないことを言わなきゃいけなかったりするじゃないですか。そうすると、自然体になれない。有権者に年長世代が多いと、年長世代にばかり配慮する社会福祉政策になりがちですしね。だから、勝手な意見を言ってしまえば、細野さんにはちゃんと現役世代に寄り添って欲しいとは思いますね。

細野:
それはすごくありますね。私は団塊ジュニアなんだけど、いろんな問題がこの世代にはある。最大の高齢化を経験する。私が生まれたとき、65歳以上は7%だったんですけど、私がその歳になる頃には40%近くになるんですよ。その分仕組みを変えていかなきゃいけない。これは世代の責任であり、世代の課題だと思っています。

しかも失われた世代という側面もありますからね。人数が多かったから就職も経済も厳しかったし、非常に孤立している人やひきこもりも多い。彼らに「自分の責任だ」なんて言ってもまったく解決しないからね。

三浦さん:
とりわけ社会人の女性にとって、これまでの日本が自分のポテンシャルを活かしにくい世の中であったのは間違いないですよね。義姉は細野さんと近い年齢なんですけど、彼女はアメリカに出て行きましたよ。日本には活躍する場所がないって。私なんかは討ち死にした先輩方が累々と横たわる大地で生きていると思っています。

細野:
そういう人たちもいることを考えると、私は日本にいるって選択をしている以上、頑張って世代のために働かないといけませんね。

〈文・撮影=いしかわゆき(@milkprincess17)〉