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2023.10.26

正念場を迎えた岸田政権に期待すること

臨時国会の論戦が本格化しています。岸田総理は所信表明演説の冒頭で「岸田内閣は、防衛力の抜本的強化、エネルギー政策の転換、次元の異なるこども・子育て政策をはじめ、時代の変化に応じた先送りできない課題に一つ一つ挑戦し、結果を示してきました」と強い自負心を示しました。

昨年は、中国などの脅威の増大に伴う防衛三文書の改訂が行われ、防衛費の大幅増額が実現しました。原発事故以降滞っていた原発のリプレースを昨年決断したのに続き、今夏は処理水の海洋放出も実現しました。四月にはこども家庭庁が誕生したのに伴い子育て予算が大幅増額されることとなっています。こうして見ていくと、発足二年の岸田政権は時代に合った大きなことを決断してきたことが分かります。

しかし、ここに来て岸田政権に対して国民が厳しい視線を向けるようになっています。一勝一敗となった十月の衆参補欠選挙の結果は自民党にとって厳しいものでしたし、国会冒頭の参院本会議では世耕弘成参院幹事長の強烈な政権批判が飛び出しました。

「国民が期待するリーダーとしての姿が示せていないことに尽きる」
「物価高に対応して何をやろうとしているのか、世の中に全く伝わらなかった」

たしかに国民は物価高に苦しんでいます。足下では補正予算でエネルギー価格補填や給付金・所得減税などに取り組む必要があります。しかし、それらは一時的な措置であり、経済政策の本質論は他にあります。

岸田総理が所信表明演説で「コストカット型経済からの完全脱却に向けて、思い切った供給力の強化を三年程度の変革期間を視野に入れて集中的に講じていく」と明確な指針を示しています。日本経済が底力をつけない限り、政府が短期的にいくらお金をばらまいたところで国民は豊かにはなりません。その意味で、総理が明示した「賃上げ税制の強化」、経済安全保障を強化するための「戦略物資の投資減税」は重要です。半導体、脱炭素、AI、自動運転、宇宙など国が取り組むべき分野は見えてきています。円安には物価高を引き起こすマイナスの側面もありますが、これらの分野の供給力を強化することができれば、わが国の輸出を増加させることもできますし、行き過ぎた円安を是正することにもつながります。

岸田総理は所信表明演説の結びで「憲法改正の条文化」と「安定的な皇位継承と皇族数の減少への対応」を国会に促しました。いずれも国家の根幹にかかわる問題であり、来年の総裁選挙までに解決できるとは到底思えません。私は本会議の所信表明演説の結びの部分を聞き、岸田総理は長期政権を視野に入れていると確信しました。

私は安全保障政策の違いから野党を離れ、六年の月日をかけて自民党の一員となりました。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとハマスの戦闘激化、そして北朝鮮のミサイル発射と中国の軍拡をみると、ここは何としても自民党が踏ん張らなければならない局面だと確信しています。岸田総理には足下の政局に右顧左眄せずに、本質的課題に泰然と取り組んでいただきたい。国民が見ているのは、最高権力者の使命感に基づいて仕事をする立ち姿だと思うのです。