憲法第8章改正による地方自治確立 ~憲法を通じてこの国のかたちを論じる~

希望の党の憲法第8章の改正案がまとまりました。改正案のベースは昨年4月に私がまとめた案ですが、昨年来、党内議論を重ねて、多くの議員の意見を取り入れたものとなりました。


憲法制定過程、法制局第一部長であった佐藤達夫氏(のちの法制局長官)は第8章の策定に深くかかわりました。佐藤氏は、財団法人地方財務協会刊『地方自治論文集』の中で、憲法制定プロセスを振り返りながら、「国あっての地方自治体」と述べています。GHQ民生局次長であったチャールス・L・ケーディス氏も、昭和62年5月の中央公論特大号のインタビューで「自治体の機能の縮小を計ったのは佐藤達夫さんです」と述べています。私は、憲法第8章は未完の条文だったと考えています。


地方自治が制限された背景には、明治以降の中央集権的発想と共に、当時の地方自治体の力不足があったものと考えられます。当時の全国の市町村の数は、何と一万を超えていました。皆さんがお住いの自治体も、当時は多くの村や町に分かれていたはずです。あれから72年が経過し、市町村の数は1718に集約され、地方自治体の機能は格段に向上しました。現行の第8章は、地方自治を巡る大きな変化に対応したものになっていません。また、人口減少が進む中で地方議会も大きな変革を迫られていますが、憲法の制約で改革は進んでいません。我々が提案する改正が実現すれば、条例制定権や課税権が拡大し、地方議会のあり方も格段に自由になります。道州制や特別自治市も誕生し、47都道府県制度にも風穴が開くことになるでしょう。


安倍総理は、施政方針演説の中で「国のかたち、理想の姿を語るのが憲法です」と訴え、国会での議論に期待を表明しました。自民党の憲法改正4項目は、自衛隊、教育、緊急事態、参議院の合区解消です。いずれも大切な項目ではありますが、「国のかたち」というには、やや本質を外していると私は考えています。国と地方の関係を定めた第8章は、「国のかたち」の根幹です。また、参議院の都道県を超えた合区を無くすには、衆議院と参議院の役割の明確化が大前提でしょう。

希望の党では、今後、教育や緊急事態、自衛権・自衛隊についても議論をします。第8章を最初にまとめたのは、国のかたちの根幹に関わる項目こそ、最優先で提案すべきであると考えたからです。第8章の改正は公明党や日本維新の会でも総選挙の公約でも記述されていますし、地方自治の確立そのものには、他の野党も異論がないもと思います。我々の提案が、憲法改正議論が進展するきっかけになることを期待したいと思います。



◇希望の憲法改正案◇

第八章 地方自治

第九十二条 地方自治は、住民の福祉の増進を図ることを基本とし、住民の意思に基づき、地方自治体によつて自主的かつ自立的に行われなければならない。

② 地方自治体は、基礎地方自治体及びこれを包括する広域地方自治体とすることを基本とし、その種類は、法律で定める。

③ 国はその本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な統治事務はできる限り基礎地方自治体にゆだね、基礎地方自治体で行うことが困難な統治事務は広域地方自治体が行うことを基本とする。

④ 地方自治体の組織及び運営に関する事項について法律で定めるときは、前三項に定める地方自治の基本原則(以下「地方自治の基本原則」という。)に基づいて、その準則を定めるものとする。

第九十三条 地方自治体には、その地方自治体の立法機関として議会を、執行機関として長その他の行政組織を設置する。議会は、その地方自治体の統治事務に関し条例を制定するとともに、長その他の行政組織による行政の執行を監視する。

② 地方自治体の議会の議員は、その地方自治体の住民である国民が、直接これを選挙する。

第九十四条 地方自治体は、地方自治の基本原則に基づき、条例で定めるところにより課税することができるほか、その権能の範囲内で自由に使用することのできるその他の固有の財源を有するものとする。

② 前項の財源だけでは地方自治体間の行政の最低限度の公平性を確保することができないときは、国は、地方自治体の自立性に配慮しつつ、必要な財政上の措置を講ずる。

第九十五条 地方自治体の住民は、条例の制定及び改廃その他の請求、住民監査請求及びこれに係る住民訴訟並びに地方自治体に関する重要事項に係る住民投票の請求をすることができる。

② 前項の請求をすることができる者の範囲及び請求の手続については、法律及び条例でこれを定める。

③ 一の地方自治体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方自治体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。



◇2017年5月 中央公論掲載 現実的な憲法改正案を提案する◇


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